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34話 解毒

last update 公開日: 2026-07-07 08:48:00

お嬢様が生きていらっしゃった。姿を消してしまった時には絶望したが、お嬢様は自ら宿敵の腕の中へ飛び込まれていたのだ。

お嬢様が立ち上がり、自ら決断し、向かわれたのなら、私はそれに従うまでだ。

九条征哉様にお会いして分かったのは、あのお方はまさしく“覇王”であるという事だ。

噂に違わぬ美貌を持ち、圧倒的な存在感と全てを手の平の上でコントロールしている絶対的王者としての振る舞い。更にお嬢様が九条様の元へ行ってからそれ程、時間も経っていないというのに、持っている情報量が計り知れない。既にお嬢様のお体の事も、そしてあの夜に堕胎されていると思っていた命も、九条様は突き止めている。

九条様はお嬢様を愛していらっしゃる……それもかなり深く、だ。

でなければ、お嬢様が九条様の元へ行かれた時に、社会的には死んだ事になっているような面倒な人間を招き入れる訳が無い。

あの瞳を見れば分かる……お嬢様の事を語る、あの瞳を見れば。

◇◇◇

俺はベッドで横になって、スマホを眺めている美織を視界の端に入れながら、部屋に持ち込んだPCで仕事をする。彼女は一体、何を考えているんだろうかと思う。

ふふっと美織が笑う。

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    お嬢様が生きていらっしゃった。姿を消してしまった時には絶望したが、お嬢様は自ら宿敵の腕の中へ飛び込まれていたのだ。お嬢様が立ち上がり、自ら決断し、向かわれたのなら、私はそれに従うまでだ。九条征哉様にお会いして分かったのは、あのお方はまさしく“覇王”であるという事だ。噂に違わぬ美貌を持ち、圧倒的な存在感と全てを手の平の上でコントロールしている絶対的王者としての振る舞い。更にお嬢様が九条様の元へ行ってからそれ程、時間も経っていないというのに、持っている情報量が計り知れない。既にお嬢様のお体の事も、そしてあの夜に堕胎されていると思っていた命も、九条様は突き止めている。九条様はお嬢様を愛していらっしゃる……それもかなり深く、だ。でなければ、お嬢様が九条様の元へ行かれた時に、社会的には死んだ事になっているような面倒な人間を招き入れる訳が無い。あの瞳を見れば分かる……お嬢様の事を語る、あの瞳を見れば。◇◇◇俺はベッドで横になって、スマホを眺めている美織を視界の端に入れながら、部屋に持ち込んだPCで仕事をする。彼女は一体、何を考えているんだろうかと思う。ふふっと美織が笑う。視線を移すと、笑っていた筈の美織の瞳から涙が流れている。俺は思わず立ち上がり、美織にツカツカと歩む。「どうした?」そう聞くと美織はスマホを下ろし、俺を見る。「ねぇ、教えて、征哉」俺はベッドに腰掛け、そう聞く美織に手を伸ばし、美織の頬に触れる。「何が聞きたい?」そう聞くと美織が言う。「私とあなたが結ばれたあの夜はいつだったの?」そう聞かれて俺は美織の頭の中の時系列が徐々に元に戻っているのだと悟る。「……本当に知りたいか?」そう聞くと美織の瞳からまた涙が流れる。「知りたいわ……征哉、教えて」そう言われて俺は美織の美しい涙を掬いながら言う。「半年前だ」美織はそれを聞いて、少し笑う。「……半年」その途端、堰を切ったように美織が泣き出した。俺はそんな美織を抱き上げ、抱き締める。体中を震わせて、泣き出した美織を抱き締め、言う。「大丈夫だ、俺が居る」美織は泣きながら言う。「私の、子……あの子は……? あの子……お腹の中に居た……私の……子……」泣きじゃくる美織に俺はただただ美織を抱き締めて言う。「大丈夫だ、大丈夫……俺が居る、俺が何とかする……」美織は泣きなが

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